海の祭レポート

【コロナ禍の海の祭】祭り中止のなか「祭り空間」を創り出す「見立て」の工夫

佐島の秋祭り(愛媛県上島町) 開催日:毎年10月第2土日月

瀬戸内海に浮かぶ愛媛県上島町の「佐島」。人口500人程の小さな島ですが、毎年10月の第2土日月に開催される、佐島の八幡神社の例大祭「佐島の秋祭り」には、隣の弓削島、生名島の人々も応援にかけつけ、島一番の盛り上がりを見せます。

令和2年度の佐島の秋祭り

「佐島の秋祭り」ですが、2020年は新型コロナウィルスの感染拡大状況を鑑み、神事のみの縮小開催となりました。今回は祭典部長の檜垣さん、次期祭典部長の柏原さん、佐島八幡神社の禰宜の福田さん、そして市田さんにお話を伺いました。
 
話し手 :檜垣さん(2019祭典部長)、福田さん(禰宜)、柏原さん(次期祭典部長)、市田さん

聞き手 :マツリズム(大原 学、藤井 大地、高田 翔太郎、伊藤 悠喜)

オンラインでのインタビューの様子

しお香る佐島の暮らし

愛媛県北部、瀬戸内海に浮かぶ上島諸島。対岸の広島県尾道市にも程近く、古くから海上交通が盛んな地域でした。中世には、佐島・生名島・岩城島は、石清水八幡宮の荘園となり、塩づくりが行われていました。近世に入ると、西国諸大名が参勤交代で通うルートにもなり、廻船業も盛んだったと言います。近代では近隣の因島等に造船所ができたことで、多くの人が造船業に従事していました。時代時代の変遷はあれど、常に海と共にある地域です。

祭りが行われる佐島の八幡神社。秋祭りは弓削島や生名島からも応援がかけつけ、一年で一番、島が沸き立ちます。地域の中を担ぎまわり、子どもたちが乗ってお囃子を演奏する担ぐ「だんじり」が、神輿を追いかけ、揉み合ってボルテージは最高潮に達します。そんな祭りのなかで、神輿が浜に降り、海の中へ入って行きます。担ぎ手もそうですが、神輿ごと海に浸けてしまう豪快な場面。これは穢れを落とす、禊とも言われています。佐島の海でとれた塩は、かつて石清水八幡宮の放生会(石清水祭)に献上され、使用された、神聖なしお。佐島の人々は、このしおの香りとともに暮らしてきたのです。

八幡神社からの眺め。美しい海と共に在る佐島。(令和元年の様子)

人生に一度のハレ舞台を奪うコロナ禍

コロナ禍の影響により、2020年は神事のみの開催となった佐島の秋祭り。中止にとなった神輿渡御やだんじりについての想いを担い手の方に伺いました。

「コロナで中止の判断はしかたがありません。ただ、だんじりに乗る子どもたち「乗り子」は、中学3年生までなんです。僕らだんじり世話人も、小学3年生からずっと見てる子どもたちなんで、ちゃんと卒業させてあげたいという気持ちはあったんですけど…。」(檜垣さん)

祭りの終盤に境内で行われる乗り子の卒業式(令和元年の様子)

毎年行われる祭りでも、年齢によって役割があります。その年の主役とも呼べるタイミングで祭りが中止になってしまえば、人生の中で2度とその機会が訪れない、そんなことも各地の祭りで起きているのではないでしょうか。何らかの形で機会が作れればいいのですが、先が見通せない状況は続いています。

ただの棒を「見立て」た工夫が、祭りの空間を作り出す

例年は神輿に納める御霊を初めて人の手で海にお連れした。(令和二年の様子)

神輿やだんじりは出ず、神事のみ粛々と行われた2020年の秋祭り。ただその夜に、不思議な「祭り」が幻出しました。通常なら、御霊が入った神輿を、だんじりが追いかけ回しながら、神社へと帰ってくるとてもにぎやかな神輿渡御なのです。今年は神輿もなく御霊が神社へと帰ってきたのですが、普通にいれるのは「おもしろくない」と、だんじりに見立てて、皆で棒を担ぎ出し、その上に子どもを乗せて神輿を囃子たてはじめたのです。

「例年だんじりで御霊を「ちょうさじゃー!」って追いかけてたと思うんですけど、今年はこのだんじりでそのパフォーマンスを何回かやってました。みんなで担ぎ上げられて、とても喜んでましたね。」(檜垣さん)

「うちの息子も乗せていただいて、例年より面白かったって言ってました。」(福田さん)

束の間にあわられた祭りの空間。ごく小規模、地域の方しかいない場所で、いつもの祭りの雰囲気や光景を、今できることでアレンジして作り出したその発想力はコロナ禍における一筋の希望のようにも映りました。そして、この祭りの中止を期に、地域として「これからの祭り」についてちゃんと考える機会にもなりました。

「お祭りをやるやらないという話をしていく中で、今までの祭りではバラバラに動いていた区、神社さん、だんじり世話役、御神輿といったそれぞれの役割について知っていきました。お祭りのためにやらなきゃいけないことをみんなこれまで把握できていなかったんだなということがわかってきたんです。みんながちゃんとお祭りのことを考える機会にはなったんじゃないかと、個人的には思いました。」(檜垣さん)

「住人の方が減少していることは目に見えているので、祭りの形が変わることはあると思うんです。形は変わっても、佐島の祭を細くても長く残していく方法を、神社側としても氏子の人も含めて考えていく必要があるのかなと思いました。」(福田さん)

例年は島内外の人が集まり大いに賑わう佐島の秋祭り(令和元年の様子)

地域における祭りの大切さを改めて感じ、人口減少のなかでどう祭りを続けていくのか。佐島という小さな島の人びとが大きな課題に対して、模索をはじめています。島同士の行き来も盛んで、他の島から祭りの応援が来ることにも慣れています。新たなだんじりのかき手としてマツリズムや大学生も受け入れてくださり、ディープな祭り体験をさせていただきました。島は小さいですが、その海は多くの地域や人びととつながっています。佐島の秋祭りに再び参加する日を楽しみにしています。
 

レポート:西嶋一泰(マツリズム)

▼情報
 
▽次回の祭の日時
佐島の秋祭り(愛媛県上島町)
日時:10月第2土日
場所:佐島の八幡神社ほか、佐島地区内
 
▽祭に関連するURL
上島町秋祭りスケジュール 瀬戸内かみじまトリップ
https://www.kamijima.info/info/festivals_schedule/

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