海の祭レポート

【コロナ禍の海の祭】祭りの熱を絶やさないためにできること

三谷祭(愛知県蒲郡市) 開催日:毎年10月第3第4土日(潮位による)

愛知県蒲郡市の東部にある三谷町では、毎年10月の第3または第4土日(潮位による)に「三谷祭」が開催されます。約300年前の故事に基づくもので、「八剱神社」「若宮八幡神社」という二つのお社を、豪華絢爛な山車(やま)が行き来します。特にお祭り2日目には、その4基の山車と男衆が海へ入る「海中渡御(かいちゅうとぎょ)」が披露され、多くの観光客が見物に訪れます。

令和2年度の三谷祭

愛知県蒲郡市の東部にある三谷町では、毎年10月の第3または第4土日(潮位による)に「三谷祭」が開催されます。約300年前の故事に基づくもので、「八剱神社」「若宮八幡神社」という二つのお社を、豪華絢爛な山車(やま)が行き来します。特にお祭り2日目には、その4基の山車と男衆が海へ入る「海中渡御(かいちゅうとぎょ)」が披露され、多くの観光客が見物に訪れます。令和2年度の祭礼は、10月17日(土)と18日(日)の開催が予定されていましたが、やはりコロナの影響により中止が決定され、神事のみが執り行われる形となりました。今回は、三谷祭を構成する氏子単位の一つ「中区」の若獅子会山田会長にお話しを伺いました。  

話し手 :山田さん(中区若獅子会会長)
聞き手 :一般社団法人マツリズム(大原、今場、伊藤、藤井)

オンラインインタビューの様子

三河湾の身近さと海中渡御

愛知県の東三河地方に位置する蒲郡市。知多半島と渥美半島に囲まれた波の穏やかな三河湾に面しています。三谷地区は、古代より温泉地として知られ、今もヨットなどのマリンスポーツが盛んに行われリゾート地としての人気もあります。豊かな海と遠浅の海岸を生かして、塩作りや、潮干狩りも行われてきました。三河湾の遠浅と砂底の海がアサリの生育に適しており、愛知県はアサリの漁獲高が全国で1位。江戸時代に殿様が潮干狩りを楽しんだ記録もあり、現在もシーズンになれば潮干狩り客が数多く集まります。この海との距離の近さが三谷祭の海中渡御への熱を産んでいるのかもしれません。
 
八剱神社から若宮神社へと、4基の山車を曳く三谷祭。かつてはその神社を結ぶ道がなかったとのことから、海を通るようになったと言われています。豪華絢爛な山車の海中渡御が見せ場となり、盛んに行われてきましたが、伊勢湾台風の影響により海岸埋立工事が行われ、海岸線が失われました。これにより山車の海中渡御は1960年を最後に姿を消します。ですが、地元からの熱望もあり、1996年の創始三百年祭を契機に、若宮神社の東の海岸にて海中渡御が復活。一度失われた伝統の復活にはかなりの労力がかかったことと思いますが、「三谷祭といえば海中渡御」という地域の人びとの熱い想い、ひいては地域と海との強い結びつきが、この「天下の奇祭」の誇りを今に伝えているのでしょう。

中区の青年による練り込みの様子。(2019年マツリズム撮影)

2020年の三谷祭は、コロナ禍により山車の曳行は中止され、神事のみの開催となりました。中区若獅子会で会長を務める山田さんはどのように、三谷祭の中止を受け止めたのでしょうか。
 
「私個人としては、その時点の社会状況から、さすがに三谷祭の開催は無理だろうと感じていたので、中止の決定はやむなしだったという印象です。ですが、若い衆は伝統的に、「何かをやりたい」という思いが強く、自分達で集まって騒ぎ出してしまう恐れがありました。以前、昭和天皇の崩御の際、三谷祭が神事も含めて中止になってしまったのですが、結局みんなが集まってしまい、騒いでしまったということもあったとか。したがって、今回も勝手な動きが起きないよう、「そういうことは一切やるな」という指示を出し、釘を刺しました。」(山田さん)
 
熱心に関わってくれる若者たちの想いを受け止めながらも、今回は新型コロナウィルス感染拡大防止のために三谷祭の全面的な中止の判断を無駄にしないために、若者たちにやむなく自制を求めた山田さん。地域の人びとの想いと力が集まって爆発する祭りの場がポッカリと無くなってしまったのです。例年は祭りの時期に必ず駆けつける三谷の出身者も帰省すらなかなかできない状況とのこと。人と人が集まり、その繋がりを感じる場そのものが無くなっていると思い知らされます。
 
「たまたま中区会館の掃除が必要となったので、約百個の土嚢を片付けなければいけないこととなりました。手伝ってもらおうと若い衆を呼んだら、青年団である25,6歳前後の人たちが集まってくれました。土嚢を片付けるだけでしたが、「こうやってお祭りの仲間と集まるのって楽しいっすね」と言ってくれたのが印象的でした。」(山田さん)
 
祭りが無くなり、その準備や会合も無くなっていったなかでの、ちょっとした手伝い。コロナ禍以前であれば、あたりまえに気軽に行っていた、その仕事でも家庭でもない、地域の仲間同士の気の置けないやりとりを、若者たちは求めていたのではないでしょうか。

三谷祭1日目夜、八剱神社前に並ぶ4基の山車。上に乗るのは無数の稚児たち。(2019年マツリズム撮影)

祭りに熱をあげ続けるための工夫

コロナ禍が続き、先を見通せない状況下で、これからの祭りをどのように開催していくのか、また新しいやり方にどれだけの人がついてきてくれるのかという不安が山田さんにはありました。
 
「今の三谷祭は、大声で地唄を唄う練り込み、一升瓶による酒の回し飲み、篠笛による飛沫、子供が乗る、密そのものの山車の上、踊りに使うお面などで構成されるので、コロナとの相性が非常に悪いでしょう。とは言っても、そこにマスクやフェイスガード、ソーシャルディンスタンスなどを取り入れると、もうこれまでの三谷祭のやり方とは全く違うものとなってしまいます。(中略)これまでとは全く違う形になってしまい、みんなのやる気がどこまで継続できるか、もしかしたらお祭りを離れてしまう人が出てくるのではないかと、考えるほど怖くなります。」
 
祭りを続けていくための人びとの「熱」。その「熱」をさまさないように、次の世代へとつなげていくための工夫を今必死に考えているところです。本当は2020年で引退する予定だった会長をもう1年だけ延長した山田さん。将来の担い手不足を見越して以前から準備してきて、コロナ禍で頓挫してしまった若獅子会の女性部をつくり仕組み
を後輩へと継承することを一つの役割と考えています。様々な方の不断の工夫がこの祭りを支えています。
 
今、祭りにどんな仕組みが求められているのか。1996年に復活した海中渡御のように、地域の熱量を集めていくブレイクスルーが求められています。

▽次回の祭の日時
三谷祭(愛知県蒲郡市)
日時:10月第3または第4土日(潮位による)
場所: 八劔神社・若宮神社・三谷海岸ほか

▽祭に関連するURL
三谷祭公式サイト
https://38fes.jp/

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