海の祭レポート

【コロナ禍の海の祭】熱い海の祭りのアツい想いを繋ぐ

熱海こがし祭り(静岡県熱海市) 開催日:毎年7月15日、16日

毎年7月15日、16日に行われ、各町内から伝統の木彫り山車や装飾山車など30 数基の山車と6団体の神輿が並ぶ「こがし祭り山車コンク-ル」と、來宮神社の神々を御鳳輦に乗せて街に降りる「御神幸行列」を中心とした「來宮神社例大祭」を合わせたお祭りです。

令和2年度のこがし祭り

毎年7月15日、16日に行われ、各町内から伝統の木彫り山車や装飾山車など30 数基の山車と6団体の神輿が並ぶ「こがし祭り山車コンク-ル」と、來宮神社の神々を御鳳輦に乗せて街に降りる「御神幸行列」を中心とした「來宮神社例大祭」を合わせたお祭りです。

令和2年度は新型コロナウイルスの影響を受け、山車の運行は行わず、神輿の浜降りなど、神事のみの縮小開催となりました。
今回は、毎年マツリズムがお世話になっている「熱海銀座町内会」の皆さんに、コロナ禍での祭りと、祭りに対する想いについてお話を伺いました。

話し手:熱海銀座町内会のみなさん(戸井田さん、小澤さん、坂倉さん)
聞き手:マツリズム(大原学、出濱 義人、伊藤 悠喜)

オンラインでのインタビューの様子

海からの「贈り物」を信仰する

熱海は古くから湯治場として栄え、「海から熱い湯が出る」ことから「熱海」という地名になったと言われています。その熱海が一番盛り上がるのが来宮神社の例祭「こがし祭り」です。来宮神社の由緒によれば、710(和銅3)年、熱海湾で漁夫が網をおろしていたとき、御木像らしき物がこれに入ったので、不思議に思っていると、童子が現れ『我こそは五十猛命である。この里に波の音の聞こえない七本の楠の洞があるからそこに私を祀りなさい。しからば村人は勿論いり来るものも守護しよう。』と告げられ、村民達が探し当てたのが今、来宮神社のある西山という地でした。境内には御神木として、樹齢2000年以上にもなる楠があります。木の宮、転じて、来宮(きのみや)とされます。

来宮神社の御神木

このキノミヤ信仰は神奈川から静岡の沿岸部にかけて広く分布し、漂着した神を祀る特徴があります。実は来宮に限らず、漂着物(寄物)を神として祀る信仰は全国に広くあり、寄神とも呼ばれます。祀られるのは、流木、舟、酒樽、玉藻、ワカメ、鯨など様々。寄神は、海によりどこからかもたらされる恵みとしての漂着物に対して、沿岸部の人びとが抱いた信仰の一形態でした。また七福神に数えられている「えびす」もこの漂着神の性格を持ちます。

話を来宮に戻すと、海から御木像を拾い上げた漁夫が最初にお供えしたのが持っていた麦こがしであったため、その由来にちなみ、例祭では先導を勤める赤ら顔の高下駄をはいた猿田彦が麦こがしを撒くので「こがし祭り」と呼ばれるようになりました。ちなみに「麦こがし」とは大麦を炒って粉末にしたもので、「はったい粉」とも呼ばれ、和菓子の「落雁」の原料ともなります。昔は砂糖とあわせて練り、素朴なお菓子として食べられていました。

祭りで麦こがしを撒く猿田彦神(2018年の様子)

地域の課題を認識し、解決する場としての祭り

例年なら、創意工夫を凝らしたド派手な山車たちが、軽快なお囃子とともに町中にひしめきあうこがし祭り。2020年は山車の運行は中止となりました。神輿が海に入っていく、浜降り神事は催行されますが、担い手の方は、どのように感じたのでしょうか。

「今年は祭りは「ない」って話になって、「まあ、ないよね」と。それでもう話は終わってるんだよね。その後はたんたんと時間が流れている感じ。」


2020年の熱海にいつもの祭りの光景はありませんでした。「しょうがない」という想いと、ないことで淡々と過ぎていってしまう日々を見送りながら、この地域にとっての改めて祭りの価値や意味についてもお聞きしました。


「若い時、長老と若手が仲が悪い時があった。ある時の祭りで雨が降って、山車コンクールが中止になった。でも夕方に雨がやんで神酒所に「雨やんだけど、山車どうしますか?」って聞きに行ったら、喧嘩腰に「観光協会が駄目っつってるし、町内会長が出さねえって決めたんだから、出さねえよ。」って言われて、「ちょっと待ってください。観光祭の話をしてるんじゃないんですよ。俺たちの祭りの話してるんですよ!」って訴えたんだ。子供達が山車の上で太鼓叩いて動くの待ってるわけ。それで土下座してお願いしたら、町内会長さんも許してくれた。「出せ~!」って、その数分後にはもう出してたね。その後、神酒所の前で「英断ありがとうございました」と頭を下げて、子供達にも挨拶させたら、「子供達が喜んでくれてよかったな」って長老たちも言ってくれて、それで収まった。これで町内会の繋がりが強くなった。祭りってそういうタイミングなんだよ。」

祭りに向けた準備で町内の多様な人々が交流する。(令和元年太鼓練習の様子)

地域の様々な人が集まって行われる祭りは、もともと抱えていたわだかまりや軋轢が表面化する一方で、その課題を乗り越えていく絶好の機会ともなります。この地域には今どんな人がいるのか、どんな想いがあるのか、どんな課題があるのか。全てを飲み込みながら、進んでいく年に一度のハレの日の山車。その機会が失われてしまったことは、地域にとって大きなダメージとなるでしょう。

中止になったはず祭りの日、「祭り」に遭遇する

表向きには中止とされた熱海こがし祭りだったのですが、「神事と御鳳輦行事だけ行う」ということを噂で聞きつけ、それが実際にどのように行われているのかをこの目で見たく、当日熱海に伺いました。


御鳳輦(ごほうれん)とは
七月十六日執行
神々を乗せた御鳳輦は、毎年四十二才になる男子により担ぎ上げられ、町中を練り歩きます。厄祓の厳守な神事でもあります。御鳳輦奉仕者は、声高らかに『みょうねん』と発し、神々に感謝の気持ちを表しながら力強く担ぎ上げます。
http://kinomiya.or.jp/top/reitaisai.html


ご鳳輦の方々は2週間の自粛など感染対策を万全にし、基本的には神輿はトラックでの移動、また行列については大幅に距離を短縮しながら実施。祭りのハイライトである浜降りや銀座町内会の前での神輿渡御を行っていました。一生に一度しかない機会をどうするか、このことについては来宮神社、ご鳳輦の方々、また町内会とも話し合いが行われたといいます。コロナウィルスという見えないリスクや葛藤と闘いながら、できる範囲の中での最良の運行方法だったのだと思います。

ほんの一時でしたが、そこには人々が抱き合い、地域ぐるみでハレの日を祝う「祭り」の光景がありました。私が好きな「祭り」に直に触れ、目頭が熱くなりました。

一方で、銀座町内会で小倉さんに直接話を聞く機会もありました。今年は”なんとか”やったけれど、来年の祭りがどうなるかが試金石だと葛藤を語ってくれました。

『神事のようなことはみんな面倒臭いと思いながらやってるわけで、来年改めてちゃんと考える、ちゃんと考えるのは多分今年でなく来年になるって思ってる。今回のことがいい機会になればと思うけど、逆におざなりになる可能性も高い。なんというか、今まで大変すぎて、人もいないのにこんなやんなきゃいけないのかとか。今回のことで、少なくとも形が出来る。大事なことはこういうことだ。だから規模が小さくなってしまう可能性はある。』

祭りの新陳代謝

ただ、祭りを実施できたとしても、担い手不足や若者の減少によって従来のような形で祭りを行うことは難しくなってきているという。

「俺らの子供の頃はもう俺らの歳の人間は山車に関わってなかった。新陳代謝ができてないんだよ。でも今は俺らが関わらなくなっちゃったら、山車が動かない。でもそうやって親父世代が祭りの中心になると中学生や高校生はやんないよ。お兄さん達がいるからやっていって、言われずとも下が育つのが本来なんだけどね。」

若者の熱気に包まれるこがし祭り夜の山車コンクール(2017年の様子)

10代後半から20代前半の若者層の異様な熱気が、祭りの求心力を生み、そこに憧れる下の世代が育っていたのです。地域社会の変化を受けながらも、この地域ならではの祭りを続けていきたい。そのためには「マツリズムのような新しい祭りの関わり方も必要になる」と言っていただきました。身を焦がすほどに熱い祭りを、外部からも熱量を持って参加する人びとが増えていく、その入り口をつくっていきます。

▽次回の祭の日時
熱海こがし祭り(静岡県熱海市)
日時:毎年7月15日・16日
場所:国道135号(東海岸町)

▽祭に関連するURL
熱海こがし祭り あたみニュース 熱海市観光協会公式サイト
https://www.ataminews.gr.jp/event/140/

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